対談

第41回 龍角散がカテゴリー別の物流を刷新 大塚倉庫の東西2拠点から共同配送

老舗医薬品メーカーの龍角散が大塚倉庫の共通プラットフォームに参画した。従来は商品カテゴリー別の拠点からそれぞれ路線便で全国の卸に納品していた。それを改め、東 西2カ所の共同物流センターに在庫を集約、共配網で翌日納品する。安定供給と輸送品質の向上、荷受け負担軽減、輸送費の抑制などが期待できる。 (進行:本誌編集部)

大塚倉庫
代表取締役社長
濵長一彦
龍角散
代表取締役社長
藤井隆太
龍角散
代表取締役社長
藤井隆太

5年で売上高が3倍に

─龍角散の売上高が急拡大しています。

龍角散 藤井隆太 代表取締役社長「2017年度の売り上げが176億円、12年度が約50億円でしたから5年で3倍以上になりました。特にここ数年は、訪日中国人観光客向けの継続的な情報発信が実を結び、売り上げが跳ね上がっています。いわゆる〝爆買い〟ですが、これは一時的な流行ではありません。その段階はとうに過ぎて、われわれの家庭薬が既に彼らの生活の一部になっています」

─家庭薬というのは?

龍角散・藤井「薬局・薬店で売っている一般薬の中でも長い伝統と使用実績のある薬を家庭薬と呼び、業界団体として日本家庭薬協会を組織しています。多くは中堅メーカーですが、われわれの『龍角散』と同様に『太田胃散』、『正露丸』、『養命酒』、『キンカン』、『浅田飴』など、そのカテゴリーのトップクラスでオンリーワンの商品ばかりです」

─この後の展開は?

龍角散・藤井「会社を大きくしようとは考えていません。先代社長の父が身体を壊し、急きょ私が8代目社長に就いた95年当時、当社の経営はぼろぼろでした。売上高約40億円に対して借金が約40億円あった。会社を畳もうと本気で考えました。どんなに歴史のある会社でも、社会的使命を終えているなら無理矢理続けても世のため人のためにはなりません」
「ところが、現場に出て愛用者に話を聞いてみると、『この製品がないとどうしても困るんだ』と多くの方が言って下さる。『うちの製品が店になかったらどうしますか?』と尋ねると、『何としてでも探しに行く!』と。涙が出るほどうれしかった。そこから会社の立て直しに本腰を入れました」
「われわれの企業としての存在価値はそこにあるわけですから、今では借金もなくなりましたが、もっともうけたいとか上場したいなどとは思いません。だから売り上げは増えても社員数は増やしていない。工場も徹底的に自動化して、むしろ省人化を進めています」

─物流部門も?

龍角散・藤井「物流部門のスタッフは現場のフォークマンを含めてもわずか数人です。売り上げと同様、物量も数倍になりましたが増やしていません。その代わりアウトソーシングの範囲を広げています」

─大塚倉庫は龍角散にどのようにアプローチしたのですか。

大塚倉庫 濵長一彦 代表取締役社長「大塚グループは夏にピークが来る商品が多いのに対して、龍角散は主に冬型ですから、共同化すれば波動を吸収できます。しかも販売チャネルは同じ薬品卸経由のドラッグストア向けと、食品卸・コンビニの2系統で納品先の一致率も高い。そのため以前からシナジーを期待できるパートナーとしてリストアップしていました。具体的な話をさせていただくようになったのは昨年1月ごろからで、われわれの『ID倉庫』『ID運輸』に興味を持っていただいたのがきっかけだったと、当社の担当営業から報告を受けています」

龍角散・藤井「実は以前、私自身が先頭に立って家庭薬メーカーの物流共同化を検討したことがあります。2001年に『関東家庭薬物流システム化協議会』という組織を立ち上げ、経済産業省の補助事業として3年間研究しました。システムを設計して実証実験も行った。その結果、共同化すれば効率化できることは分かったのですが、家庭薬とはいえ薬は食品や雑貨に比べると売上高物流費比率が小さく、物量も少ない。医薬品卸の再編が進んでメーカーの納品先が集約されたこともあり、具体的な動きにはつながりませんでした」

─2000年代と今では環境は大きく変わりました。

龍角散・藤井「流通の変化に加えて、人手不足で物流環境が変わってきました。当社の場合、医薬品や服薬ゼリーなどのドラッグ系商品は千葉県の自社工場に併設した物流センターから、食品系は長野から、それぞれ路線便で全国の納品先に送っているのですが、物量が増えていることもあって繁忙期には残貨が発生するようになりました。集荷に来たトラックが満載になると追加の車両を出してくれない。残りは置いていかれてしまう。輸送品質の問題も目立ってきています」
「物流が今まで通りとはいかなくなってきました。こうなると共同化によってコストアップを抑制したり、物流品質を維持したりという切り口を、改めて検討する可能性が出でくる。他の家庭薬メーカーも状況は同じですから、協会でも改めて物流について考えてみる必要があるかも知れません」

路線便から共同配送に転換

─大塚倉庫の具体的な提案内容は?

大塚倉庫・濵長「商品カテゴリー別に1カ所から全国に路線便で納品する現在の体制を改め、われわれの東西2カ所の共同物流センターに在庫を集約して、そこから共同配送で翌日納品しましょうとご提案しました。リードタイムが短縮されて輸送品質も上がります。納品先を調べたところ物量の8割以上を共配に乗せられることが分かりました。残りの遠隔地向けには路線便を使いますが、それも当社のパートナーなので運用は安定しています」 「コスト面でも従来はカテゴリー別に分かれていた納品がまとまり、納品伝票の枚数が3分の2近くに減ります。工場周辺に賃貸されていたバッファー倉庫も必要なくなる。東西2カ所のセンター費用が新たに発生しますが、現状のコストとほぼイーブンでスタートできます。そこからどれだけ運用を効率化していけるかが、当社の腕の見せ所です」

龍角散・藤井
「われわれが自分で物流を仕切るよりプロに任せたほうがいいことは分かっています。コストはもちろん、品質、リスク、荷受け側の問題も含めてどこまで改善できるのか、期待をもって見ていきます」

大塚倉庫・濵長「私はずっと物流業で生きて来ましたので、物流が今、大きく混乱していることに関しては自分なりの考えを持っています。有効な解決策の一つが共同物流だと考えて、今はメーカーに共同化を呼びかけているわけですが、まだ手が付けられていないもう一つの問題として、日本に特徴的な多段階流通があります。商流は多段階であっても、物流はダイレクトでいいはずです。それが実現すれば、恐らく現在のドライバー不足は解消できる。そうした情報発信を物流業の立場からしていくつもりです」

第40回 進化する日用品プラットフォーム メーカー共同物流の最適解を追求